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新NISAは改善? 改悪? 変更点を知って上手に活用しよう!
2023.6.7 NISAパーフェクトガイド
新NISAのロールオーバーについて説明する前に、まずは改定されたポイントをおさらいしておきましょう。
新NISA | 一般NISA(現行) | |
---|---|---|
口座開設期間 | 恒久化 | 2014年~2023年 |
年間非課税枠 | つみたて投資枠:120万円 成長投資枠:240万円 |
120万円 |
生涯非課税限度額 | 1,800万円 (うち成長投資枠:1,200万円) |
600万円(非課税投資枠) |
非課税保有期間 | 無期限 | 5年 |
大きく変わるポイントは、新NISAはつみたて投資枠と成長投資枠の2つを併用できることです。
現行NISAでは、一般NISAとつみたてNISAのどちらかを選ぶ必要があり、併用はできませんでした。新NISAでは、つみたて投資枠として120万円、成長投資枠として現行の一般NISAと同様の投資ができる非課税枠が用意されています。
新NISAでは、生涯非課税限度額が新設されました。生涯非課税限度額とは、その人が一生涯に投資できる非課税枠のことです。限度額を超えて非課税枠を利用することはできません。
年間非課税枠はつみたて投資枠120万円、成長投資枠240万円なので、年間の限度額は360万円です。これを毎年使い切った場合、約5年で生涯非課税限度額を使い切ってしまう計算になります。
年度 | 2024年 | 2025年 | 2026年 | 2027年 | 2028年 | 累計投資額 |
---|---|---|---|---|---|---|
つみたて投資枠 | 120万円 | 120万円 | 120万円 | 120万円 | 120万円 | 600万円 |
成長投資枠 | 240万円 | 240万円 | 240万円 | 240万円 | 240万円 | 1,200万円 |
累計投資額 | 360万円 | 720万円 | 1,080万円 | 1,440万円 | 1,800万円 | 1,800万円 |
ただし、生涯非課税限度額には注意書きがあり、「薄価残高方式で管理(枠の再利用が可能)」とされています。つまり、運用の途中で売却した金額分については生涯非課税枠が復活する仕組みです。
たとえば、満額の1,800万円使い切ってしまったとしても、500万円分の商品を売却した場合は投資枠を1,300万円使っていることになり、500万円の非課税枠が復活します。
また新NISA改定のポイントとなるのが、非課税枠の保有期間です。現行の一般NISAでは5年の制限があったため、より長く保有したい場合はロールオーバーにより期間を延長する必要がありました。
しかし新NISAでは、つみたて投資枠・成長投資枠ともに非課税保有期間が無期限となります。そのため、新NISAではロールオーバーの手続きの手間がなくなります。
さらに、口座開設期間が恒久化されたことが、新NISAとこれまでの一般NISAとの違いです。
口座開設期間が恒久化されたことにより、制度が廃止されるまで半永久的に新NISA制度が継続されることが決まりました。
新NISAについてくわしく知りたい方は、「2024年からスタートの新NISA、どう変わる? どんな人にオススメ? 」をお読みください。
これまでの一般NISAでは、非課税保有期間が最大で5年と決められていました。
5年の運用が終わった非課税枠の商品は、その年の新しい非課税枠へ移動させるロールオーバーか、課税口座に移行する必要があります。
一方、前述のとおり、新NISAでは非課税保有期間が無期限化されたことにより、非課税枠で購入した商品は課税口座に移行させるまで、永久的に保有できます。
そのため、現行NISAのようなロールオーバーの手続きは不要となりました。ロールオーバーするための面倒な手続きがなくなったことや、5年以内に売却しなくてはならないといった不安はなくなります。
現行の一般NISAを運用中の場合、現在保有している商品がどうなるのか気になるかもしれません。
ここでは、新NISAスタート後、現行の一般NISAの運用はどうなるのか解説します。
新NISAが始まる2024年からは、新旧NISA制度は別物として運用されます。
つまり、2023年まで運用していた一般NISAの非課税限度額120万円と新NISAの非課税限度額累計1,800万円は別枠と判断され、併用して運用できます。
そのため、2024年に新NISAが開始されたからといって、すぐに一般NISAで運用中の商品を売却する必要はありません。
現行の一般NISA口座から新NISAの口座へのロールオーバーはできません。一般NISAの非課税期間5年が終了した場合、順次課税口座へ移管されます。
たとえば、2023年12月に現行の一般NISA口座で購入した商品は、2028年に課税口座に払い出しされてしまいます。
一方で、2023年につみたてNISAで商品を購入した場合は、2042年末まで、つまり非課税期間の20年間は運用を継続することができます。これは現行NISA制度は新NISA制度の外枠で運用されるためです。
ジュニアNISAは、残念ながら2023年末に廃止が決定されています。ただし、2023年末までに新規投資したジュニアNISAの商品は、子どもが成人するまで非課税で運用を続けられるので、安心してください。
ここでは、現在ジュニアNISAを運用中の人にとって、廃止によるメリットとデメリットの両方があることを紹介します。
NISA改正・ジュニアNISA廃止が決まったことにより、自動的にロールオーバーする継続管理勘定(ロールオーバー専用勘定)が設定されました。
これまでは2024年以降のジュニアNISAのロールオーバーは手続きが必要でしたが、この手続きが不要となったのです。
一方で、NISA改正・ジュニアNISA廃止によるデメリットも出てきました。
これまでの制度では、子どもが成人したら自動的にNISA口座へ移管される仕組みでした。しかし2023年末以降に成人する場合は、成人を迎えた後に自動的に課税口座へ払い出されてしまいます。
新NISAを利用するためには、一から商品を購入していく必要があります。
新NISAは非課税保有期間が無期限化されるため、ロールオーバーする必要がなくなります。制度が廃止・改正されるまで、半永久的に手続きなく持ち続けることが可能です。
ただし、現行の一般NISAで運用中の非課税枠は2024年以降、保有期間が終わったものから順次、課税口座に払い出されていきます。
また、ジュニアNISAは2023年末に廃止が決まっていますが、ロールオーバーの手続きは不要となりました。ただし、成人後は課税口座に払い出しされてしまいます。
新NISAの制度内容については、まだまだ変更される可能性があるため、金融庁のサイトで最新情報をご確認ください。
大木 千夏(おおき ちなつ)
独立系FP、金融ライター。もともとは臨床検査技師として病院に勤務、その後フリーランスライターとして独立した。ライターとして活動するうち、金融業界に興味を持ちAFP取得後、独立して横浜に事務所開設。
2級ファイナンシャル・プランニング技能士、AFP。